昭和もち肌ロマン

キスマイ北山くんを明子ねーちゃんのごとく見守るジャニヲタのブログです。

NODA・MAP『エッグ』@東京芸術劇場プレイハウス

皆さんがジャーニーに沸きに沸いてる中しかもお引っ越し一発めの記事がnotジャニの舞台かよってスライディング土下座なことしでかしてですみません。
今日書かなかったら忘れそうなのと書いておける場所がここしかないので、使わせてくださいませー。

 

NODA・MAPで(珍しくオリジナルのキャストで)再演が決まった『エッグ』。2012年以来2度目の観劇でした。2015年バージョン初。

舞台の梁の裏から見つかった寺山修司の遺稿『エッグ』。それを作品として蘇らせようとする芸術監督(野田秀樹)。リアルタイムで進む原稿の読み解きと作中世界が混在しながら、むしろ混乱しながら舞台が移り変わっていく。

この舞台のキーとなってくるのは、『多重構造』『書き換えられた物語』『気が付かないうちに誰かの靴を履かされ背番号をつけられていた男』『植え付けられた先入観』。

奇妙なスポーツ『エッグ』の世界に突如現れた脳天気な男、新星アベ。エッグの英雄として名を馳せたツブライのポジションと歌姫・苺イチエを颯爽とかっさらっていく。だがそれは英雄という名のスケープゴートになる筋書きのはじまりだった。

劇作原稿を読み解きながら何度も覆されていく世界。
「『オーナー』といったら普通は男を思い浮かべるだろう?でもそれは違う。オーナーは女だった。」
「エッグは男のスポーツではなく、白衣の天使から生まれたもの。」
「『東京オリンピック』は1964年の開催されたオリンピックではなく、1940年の、鈍色の空の下のオリンピック。開催されなかったオリンピックのことだ。」
「この物語の舞台は日本ではなく満州。」

卵を割らずに殻に穴を開け、中身を抽出するスポーツ『エッグ』は、いつしかユダヤ人を選り分けるために使われたパンチ穴(点字のような情報技術)、ワクチン製造、細菌兵器の製造技術の隠匿のための暗号、と変化をしていく。

寺山修司がこの物語に隠した、真実とは?

 

光が射すようなスポーツマンたちの物語を見ていたと思っていたら、気がついたら鈍色の空の下、満州の細菌兵器研究所に連れて来られていた。そんな印象を受ける展開が見事。

何気なく見ていた物語の前半部にも物語の終末を暗示する諸々が蜘蛛の巣のように張り巡らされていて、徐々にその全体像が見えてくるのが気持ちいいほど。

そして何度も何度も覆されるこの世界の謎がようやく解けたように見えたラストシーン、芸術監督が放つ一言で、まるで積み木で組み立てた家が蹴り飛ばされるかのように、丹念に作り上げられた世界が、まるごと崩されてしまう。

あなたが今見て生きている世界なんて、こんなふうに、誰かが作った物語を信じきってるだけかもしれませんよ、って言われているみたいに。

野田さんの手腕、素晴らしく鮮やかだったなー。

 

演者さんのなかで印象に残ったのは、苺イチエを演じた深津さん。

いろんな舞台でお見かけしますが、キャスト見ないで行くと、深津さんだと最後まで気づかないことがあるくらいなんだよね。そのくらい、ご本人の気配を消している。

カテコでは役がすっと抜けて、現実に戻ったように出ていらっしゃる役者さんも多いですよね。そんな中深津さんは、まだ苺がそこに生きているかのようにふるふると震えるように涙をこぼしてらして、この方は、舞台の上では劇中の人物として生きてしまう女優さんなのかな?と感じました。

『芸術監督』『スケープゴート』『英雄』『オーナー』と、ある意味役割が明確に与えられそれを遂行する役柄が多い物語の中で、唯一と言っていいほど人間らしく感情を爆発させる苺。

一期一会の恋に生き、真実を追求しようとし、アベを憎み、罰されることさえ許されず、最後は憎んだ相手のそばで死ぬことを選んだ苺。

そんな激しく重すぎる人生を、毎日毎日繰り返し生きるってどんな気持ちだろう。舞台役者っていうのは、想像を絶する生き方だなって(ご本人はぜんぜんそんな気持ちではないのかもしれないけど)思ってしまいました。
世にも奇妙なの『懲役30日』をちょっと思い出した。ご興味ある方はぜひぐぐってみてくださいね。

 

野田さんの舞台は演劇体験としても素晴らしいですけど、戯曲で読み返したくなるような言葉たちもさすが。

個人的に印象に残ったのは、「大衆にはスポーツと音楽を週に一回与えておく。そうすれば大方の不満と疑問はかき消されるのよ。」「あなたは広報部長に就任よ。振り付け師よりも大衆を踊らせるほうがずっと楽しいわ。」っていうオーナーの言葉ですかね。笑
いやーわたし完全に踊らされてる側の人間ですわー。って耳が痛かったですw ヲタクって大衆と呼ばれるのを嫌う生き物だと思うんですが、あまりの鮮やかな斬られっぷりにわたし大衆ですすみませんでした!ってなりましたよね!

もちろん他にも美しく、深く、痛い名台詞がたくさんありました。戯曲探してちゃんと思い出そう。うん。

 

再演だからどうしよっかなーと思ってたんですが、行ってよかった。初演の時はとにかく怒涛の波に連れ去られてあっぷあっぷなんかよくわかんないけどすごいこと起こったぞ!!って感想でしたけれども、もうすこしいろんなことに気づきながら観れたかな。

でもたぶんまだぜんぜん気付けていない仕掛けが山ほどあるんだろうなと思います。野田さん頭良すぎる。
現実にあった満州731部隊のこととか、寺山修司のこととか、知れば知るほど深く気づいてしまう(そして現実に恐怖する)ことが増えるんだと思う。

 

興味ひけるように書けたか謎ですが(そもそも読んでくださってる方は基本ジャニヲタである)とにかく最高の演劇体験ですので、ご興味ある方はどうぞ!当日券出てます!

NODA・MAP『エッグ』
http://www.nodamap.com/egg/

 

さてじゃーにーの感想はいつ書けるのか!
ひとまずFIRE!!をあと32回リピートしてから寝ます。おやすみなさーい!